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コラム

 コラム2 生涯学習の視点でとらえる
教員になって16年目、社会教育センターというところに異動になった。生涯学習という言葉が広がり始めた頃である。
そこでは専門員という肩書で、様々な県民講座の企画運営が主な仕事であった。

全く学校とはかけ離れた仕事内容だったので、最初は随分面食らった。
半年が過ぎて仕事にも慣れた頃、生涯学習では盛んに「支援・援助」という言葉が使われていた。
生涯続ける「学び」は、勉強ではなく学習であり、指導するものではなく支援するものだということであろう。

指導という言葉に慣れていた私にとっては、少し生ぬるい考えのように思われて、最初はなじめなかった。しかし、講演で何度かその提唱の主旨を聞くにつれ、生涯学習の考え方に共感をもつようになった。
そして、美術教育こそ生涯学習の延長線でとらえるべきではないかと、考えるようになったのである。

学校教育の中だけで美術教育を考えようとすると、様々な弊害が起こる。
定期考査で行われるペーパーテストもその一つであろう。紙面による出題では、知識や記憶の定着度を測る傾向がどうしても強くなる。
他教科と歩調を合わせるために実施される場合もあると思われるが、そのことによって「つまずき」や「苦手意識」、もっといえば「美術嫌い」の原因を作り出しているようにも思えるのだ。
定期考査は、評価の根拠を保護者や生徒に示す材料の一つにもなっている。
私の場合は、自分の授業の中で小テストを行うこともあったが、学習指導要領の改訂に伴って時間数が減少したこともあり、実習時間を確保するため最近ではほとんど実施していない。

さらに、学校での指導方法は主に集団で行われるため、例えばペースの遅い生徒を急がせてしまうこともよくあり、個人差を尊重することが難しい環境なのである。
それらのことが、自己表現に対する苦手意識を生み出してしまう原因の一つにもなっていると考えられる。

苦手意識は、人との比較によって生じることが多く、残念ながら学校にはそれらを生み出してしまう要因が多くある。
これからは、造形表現を生まれてから死ぬまでの生涯学習の視点でとらえ直し生徒ひとり一人が、造形活動を通じて生きている喜びを味わえるようにしていきたいものである。