Point.8 小さな作品にでも、思いは込められる
ここでは、3校目の学校での実践例を紹介する。この学校は、美術教室が大変狭く、水道の蛇口が三つしかないという厳しい環境であった。
そんな条件下でできる題材を開発するために、次のような目標を立てた。

 ○ 準備と片付けがスムーズに行えること
 ○ 50分単位で展開できること
 ○ ゴミの処理を簡単にできること
 ○ 基本的な道具の使い方を学習できること
 ○ これまでしたことがない題材であること

そして、これらの条件をすべて満たす題材として「オカリナづくり」が生まれた。
★ 題材2「土笛からオカリナへの進化」
             参照 ⇒ P56
箱づくりから彩色までの一連の行程を、一年次の2学期から約半年かけて展開したのである。

この題材では、材料用具の基礎的基本的な使い方や扱い方を確実に身に付けられるように、また一つ一つの工程を丁寧に粘り強く取り組むことを目標としている。
この授業の後、生徒の取り組む姿勢が大変よくなったことは、忘れられない思い出である。


 数をこなすよりも、一つのことをじっくりと最後までやり遂げること

前任校で、「土鈴づくり」を教材化したとき、粘土を触っているときの嬉しそうな生徒の顔が印象に残っていた。幸い、小さい七宝焼の窯があり、詰めたら一度に10個ぐらいは焼ける。授業中に生徒の前で焼成し、真っ赤になった粘土を見せたいと思った。

その頃、宮崎駿の「トトロ」の映画を見る機会があった。小さな頃から漫画好きの私は、アニメも大好きで宮崎駿の大ファンであった。
トトロが、木の上で丸い楽器を吹くシーンがあり、「ボーーッ」という低い音色に惹かれた。
どうもオカリナらしい。

音の出るしくみを本などで調べながら、20㎝位の椰子の実のような形の土笛を作った。
まともに音が出るまでには、何度も歌口を作り直さなければならなかったが、「ボーーッ」と鳴った瞬間、「やったー」と年甲斐もなく叫んでいた。この喜びを、生徒と分かち合いたいと思った瞬間でもあった。

工夫を重ね、一オクターブほどの音階が出るようになり、第1号の「オカリナを吹くトトロのオカリナ」が完成した。素焼き焼成し、アクリル絵の具で彩色した。
「蓮の葉を持つトトロ」「紅の豚」「テト」「猫バス」などのキャラクターや、生徒のリクエストで「F1カー」「私の自刻像」などもオカリナにした。
当時、小学2年の次男が遊びで作った粘土の魚のオカリナも残っている。

オカリナを作るための7つ道具とオカリナの作り方を冊子にまとめ、各校種の教員・児童生徒学生、県民講座や開放講座で主婦からお年寄りまで、これまで千人を超える人たちとオカリナづくりを楽しんできた。

タイトルイメージ
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