ここでは、前頁で述べた「作業性」を導入部に取り入れ、さらに達成できそうな小さな目標を設定した題材として、「切り絵」を紹介する。
題材例「切り絵」
制作手順
① 図案を選び、トレーシングペーパーに輪郭を鉛筆でトレースする。
② 黒の台紙の裏面に白のカーボン紙を当て、線をなぞって図案を写し取る。
③ 白い線に沿って、デザインカッターで切り抜く。
④ 配色を考え、トレーシングペーパーの輪郭線を手掛かりにして色紙を切り、裏面に貼り付ける。
準備物
「切り絵」セット (黒台紙1枚、白カーボン紙1枚、和紙10色、透明板1枚、デザインカッター1本) トレーシングペーパー、カッターマット、のり、はさみ
この「切り絵」の題材では、下絵の善し悪しが出来上がりに大きな影響を及ぼす。
切り絵独特の線と面の処理による図案化には、相当の考える力とデザイン力が要求される。
そこで、生徒の力量に応じてA~Cの三つのレベルから選択できるようにした。
さらに、それぞれのレベルの評価の最高点を、100点、90点、80点とし、自分の力量を技術面と意欲面の両面から総合的に判断して、どのレベルで挑戦するかを決めさせた。
A … 自分でオリジナルの図案を作る
B … 自分で探した図案を模写する
C … 準備した図案から模写する
Cレベルで準備した図案は、当時、毎週朝日新聞に掲載されていた切り絵画家「滝平次郎」のカラー作品で、学校図書館司書がスクラップしていたものを使った。
小さな事柄でも、自分で決めるという行為は大変重要であると考えている。題材の各所に、自分で選択するしくみをちりばめておくことが、意欲的な活動へと結びつけると考えた。
切り絵は、完成までの行程を
①「図案の転写」
②「切り抜き」
③「色の決定」
などの行程に分けることができる。
それぞれの行程には、
①「うまく写すことができた」
②「きれいに切ることができた」
③「バランスよく色を配置して、きれいに貼 ることができた」
などの到達目標が設定できるので、その結果を自分で判定することができる。
また、これらの小さな積み重ねによって、高次から自らの行動を見通すメタ認知力が向上し、大きな目標を達成するときに必要な能力であると考えている。