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 Point.7 やる気が出る題材の設定
  (1) 作業性を取り入れて、集中力を付ける

落ち着きのない生徒にやる気を出させ、最後まで根気よくやり遂げられるように導くにはどうしたらよいだろうか。
私は、こう考えている。
一つ一つの到達目標をなるべく低く設定するとともに、作業的な要素を取り入れ、これなら自分にもやれそうだという気持ちが起こるようにする。
一つ一つの達成感がそんなに大きくなくても、積み重なることによってだんだんとやる気が増し、それに伴って集中力も増してくる。
そして、最初はとても無理だと思っていた大きな目標にも、いつの間にか到達することができ、やれたという自信につながっていく。
まとめると、

 作業的要素を取り入れながら、やれそう な小さな目標と達成感を積み重ねていくことによって集中力を養い、大きな目標を達成できるようになっていく題材を開発する。

ということになる。さらに、

 ステップ学習と作業性を組み合わせると ともに、それぞれの力量に合わせて難易度の違う目標を選択できるようにする

と、より効果的である。それらの考え方を取り入れた題材例として、次ページ(2)達成できそうな目標の設定と選択の題材「切り絵」を参考にしていただきたい。

私はこれまで、「セットもの」をあまり使わないようにしてきた。それは、自分で工夫する部分が少なく、独創性や創造性を期待しにくいと感じてきたからである。
しかし一方、私は「セットもの」の代表のようなプラモデルが大好きである。
プラモデルには、説明図通りに作れば必ずできるという安心感がある。そして、複雑なものでも少しずつ組み立てていくと完成でき、一定の見映えもするようになっている。一から自分の力で作り出すことが難しいものでも、適切なガイドがあれば達成できる例である。
私の場合、何よりも単調な作業そのものがストレスの解消に役立っている。仕事に疲れたときでも、「帰ってからあの続きをやろう」というわくわくとした気持ちになれる。

単純な作業ほど、慣れてしまえば苦にならないものである。
私は中学高校と陸上部であったが、跳躍が専門だったので長距離走が苦手だった。駅伝にかり出され、練習していたときのことである。
ある距離を超える所まで走ると、体が急に楽になって幾らでも走れそうな気分になる。
脳内にドーパミンが分泌され、一種のトランス状態になるのだろう。
制作にも同じことがいえる。オリジナルで独創的なものを作り出そうと力んでいるときは苦しくてはかどらないが、エスキースから徐々に大きくしていったり、作業性の高い行程を多く取り入れると取り組みやすくなる。
単調な作業の繰り返しがリラックス感を生み出し、集中力につながっていくのであろう。