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 Point.6 何かをしたくなる空間づくり 
私の目指す美術教室は、「入った途端に、何かを創造したくなる衝動に駆られる空間」である。そのための条件整備として、次のようなことを心がけている。
 ① 材料が豊富にあって選べる
 ② 必要な道具が揃っていて使える
 ③ 作りかけの作品を保存できる
 ④ 参考資料や作品の閲覧・鑑賞できる
 ⑤ 制作に必要なスペースが確保できる
 ⑥ やる気が起こる雰囲気を作る
 ⑦ 相談にのってくれる専門家がいる

①~⑤は物的環境といえ、事前準備できることばかりである。これらが十分に行えていれば、成功したも同然なので、それぞれについて、詳しく述べたい。

 ① 材料が豊富にあって選べる 学校で準備する材料は、できるだけ専門的な良い素材を用いたものを購入するようにしたい。作品の最も根幹になるところなので、例えば版画では専門紙のアルデバラン、ポスターではケナフ紙を使うなど、貴重で高価なものを使っているという意識から大切に扱う気持ちや、良いものを作っていきたいという創作意欲につながっていくことが多い。
小さな投資で大きな価値を生み出すので、ここでは贅沢をさせたいと考えている。
 ② 必要な道具が揃っていて使える 私はよく100円ショップに通っている。カッターナイフやセロハンテープ、共同で使うほとんどのものを揃えることができる。40名を超える授業では、数が必要になる。他種類の道具を待つことなく使えるように、思い切って「質より量」にしている。
 ③ 作りかけの作品を保存できる 図書館で余った書架をもらってきたり、棚の上をできるだけ整理して場所を確保するようにしている。全学年で200名の作品の置き場所を同時に確保するのが難しい場合は、場所を取る立体作品の制作時期を学年でローテーションするなどの工夫をしている。
 ④ 参考資料や作品の閲覧・鑑賞できる できるだけ多くの作品を掲示できるように、平面作品はラミネート加工することによって、額を使用しなくても見栄えもよく、ピンでとめやすくなり、汚れや痛みの防止にもなる。
立体作品はワイヤーを張ってクリップでぶら下げたり、ディジタルデータ化してモニタで鑑賞したりできるようにしている。
 ⑤ 制作に必要なスペースが確保できる 机を向かい合わせにして、4列8脚の島を6個作るようにしている。机がつながることによって作業スペースが増え、物の落下も防止できる。島同士の間が広くなり、移動しやすい。
また予備の島の1つに、材料用具を並べ、いつでも使えるようにしている。
生徒が指導者の話を聞くときに、顔や体が横向きになるが、全体の動向は十分に把握できる。隣同士での私語が多くなる傾向もあるが、お互いの顔が見えることによって、雰囲気が和やかになる効果も見られる。

⑥はPoint.4と7を、⑦は、第3章資料「アドバイスランク」を参考にしていただきたい。