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 Point.4 みんなで集中できるルールづくり

 教員になって最初の頃、生徒の根気が続かないことに驚いた。
こんな言葉が生徒の口からよく出る。「どうせ自分は下手だから」「自分にはとてもできそうにない」など、造形表現への劣等感を強くもっていることがわかる。
これまで自己を肯定してもらえる場面が非常に少なかったのであろう。
自分に自信をもてるような題材を開発する必要があると感じた。

そのためには、目標をやり遂げたときの達成感や成就感が味わえるようにすること、またそれをみんなが真剣に行える雰囲気を作ることが大切であると考えた。
否定的な態度の生徒が数人いると、他の生徒はそれに引きずられてしまう。
そこで、みんなが集中できる雰囲気を作り出すために、みんなが納得でき、そして守ることができる一定のルールが必要であると考えた。

例えば、

みんなができるまで、次の作業を待つ

というルールを決める。

早くできた人は、遅い人を待たなければならない。遅い人は、早い人に待ってもらわなければならない。簡単なことのようであるが、様々な心理が働き、教員も生徒もいくつもの壁を乗り越えていかなければならない。

例えば、説明を聞き取れない生徒の場合、の主な理由として、
「説明の内容が能力的に理解できない」
「何らかの理由で説明を聞き逃した」
「説明の内容は理解できるが、自分にはできそうもないとあきらめた」などが、考えられる。

最初のうちは他の生徒から、「早くしろよ」とか「焦ってできない」という声が出てくることもあるが、この学習ではみんなができるようになることが重要だということを力説し、ステップをできるだけ短く設定しながら進めていくようにする。

指導者が、一つ一つの行程をできるだけ短く区切って、焦らずに進めていくと、早くできたという優越感や遅くなったという劣等感などがだんだん薄れていき、みんなができているという連帯感や充実感が喜びとして感じられるようになってくる。
そうなると、お互いに遅れないように努力することはもちろん、遅れている人を手伝う気持ちも生まれてくる。
他人に教えた経験をもつ生徒は少ないが、教えることによって自身の学習が定着するし、何よりも感謝されることがうれしい。

ある程度軌道に乗ってきたら、作業性による集中力増の効果が生まれてくるので、うまくいけば終盤まで黙々と作業をする姿が見られる。
この指導方法は、集中できない生徒が多いクラスでは大変効果的であった。

人はだれでも学びたいと思っている。それをみんなで達成することが、みんなが納得し守れるルールにつながると考えている。